2. 人を つなげる

文庫を運営するのは愉しいながらも大変です。自分たちだけでは行き詰まってしまう時もあります。そんな時に同じ志をもっている仲間の経験は励みになるだけでなく、新しい知恵やアイディアをも得られるものです。ICBAは、そんな文庫会員をつなぐことを大事な仕事だと思っています。

  • UK支部ではUK文庫リーダー/会員が集まる連絡会が年に3度開かれます)
  • 現在活動している会員のみならず、文庫のOB、その他ICBAの活動に興味がある方との交流や意見交換もしています。

3. 和を ひろげる

文庫活動が社会に広く理解されることが文庫活動を担っているお母様、お父様達の後方支援だと思っています。仲間や理解者が増えていくように、さまざまな形で広報活動を行っています。

  • ニュースレターを発行し、各地の文庫活動やICBAの活動などを伝えます。
  • 子ども達の交流の場となるイベント、または講演会やワークショップを開催しています。
  • 個人や企業に寄付のお願いをしています。

UK支部長:森嶋瑤子より

Mrs Yoko Morishima第二次世界大戦後70年近い年月経ち、日本の国際交流が世界の各地に広がった結果、2カ国の言葉・文化の中で育つ「ダブルチルドレン」は絶え間なく増え続けています。イギリスでも30年前に「こりす文庫」で始まったUK支部は、33文庫に550人を越える子ども達が参加して楽しく活動をしている大所帯に成長しました。
ICBAの文庫は学校ではありません。日本語を話す小さいコミュニティ(主としてお母さん達とその子ども達)であって、その中では絵本や紙芝居を使ったり、言葉遊びを楽しんだり、折り紙その他のアーワークなどを通して、日本語や日本の文化に自然に楽しく触れることを大切にしています。子ども達はそれらの活動を通じて、まず聞き、話をすることを経験し、それから読んで、書くという方向に導かれる場所です。それらはすべてボランティア活動で行なわれています。
各文庫は ICBAの趣旨 の下で活動していますが、それぞれの文庫は状況が違うので、いわゆるマニュアル通りでは運営は出来ません。お母さんたちはそれらの条件に対して臨機応変に対処し、子ども達にとって最善の活動を考えて下さり、それぞれの文庫は個性を持った活動をしています。
「誰からも強要されずに無報酬で何かをする」ボランティア活動では先進国のイギリスから学ぶことは沢山あります。出来る人が出来ることを出来る場所ですることで、 文庫活動を必要とする子ども達が存在する限り、無理をせず永続性を持って活動を続けるよう努めています。

A message from Mrs Dunn

Mrs Opal Dunn

2020年パンデミックのなかでのIC文庫の子どもたち

今は全ての人にとって、特に子どもたちにとってむずかしいときです。子どもたちの世界は今までと全く変わり、家の中にも外にも普段の生活はなくなってしまいました。「ロックダウン」で家にいることを強いられ、そこには普段外で働いている親がいて、毎日の日課や家族との関係も変わっています。突然の休校で、家で家族と一緒にいるときとは別の自分のアイデンティティで行動する学校という場所を失って、家の外での社会生活もなくなってしまいました。学校では、家にいる時とは違う自分で同い年の子どもたちと遊び、時にはリスクも恐れません。文庫活動もできなくなり、家族以外の日本人と交わったり、日本人としてのアイデンティティを感じたりする機会もなくなりました。ですから、大人の視点ではなく、子どもの視点に立って、今の子どもの生活をみるように努めましょう。子どもたちは今の状況をどのように感じているでしょうか。

もうすぐ6月です。何か月かに及んだロックダウン生活の後、子どもたちの世界はまた徐々に変わり始めています。学校の再開、フットボール等のスポーツのテレビ観戦の再開。子どもたちは学校に戻って友達とどのように「ソーシャルディスタンス」を守りながら遊ぶのか、親は子どもたちに言って聞かせる必要があります。日本で日本語だけで暮らす子どもたちと違い、英語で話す学校に通うIC文庫の子どもたちにとっては、学校のアクティビティや他の子どもたちとの交流さえもがチャレンジです。日本人の子どもの中には、休み時間に校庭に行くことにさえ臆病になってしまうことがあります。

IC文庫の活動は、子どもたちがダブルアイデンティティを持つことを「feel good」、よいことだと感じられる手助けをしています。アクティビティを一緒にすることで、そこに「自分の場所をみつけ」、自分がどのように感じ、また、その感情をどのようにコントロールするか等を学ぶ機会になっています。家庭という安心できる空間でも、日本人の親は同じようなアクティビティやおしゃべりを通して、子どもがまた自信をもって外に出かけられるようにしましょう。

一日の決まった時間に「You and Me Times(あなたと私の時間)」を設け、会話のキャッチボールができるアクティビティを一緒にするのはいかがでしょう。今現在、あるいは将来の経験について子どもと向き合って話すことで、大人は自分の言うことを聞いてくれている、どのように感じているか心配してくれていると子どもは感じとるでしょう。「会話のキャッチボール」を少し進め、どう思うの?とか、どうしたの?といった質問をなにげなくしてみます。おしゃべりが予想しない方向に進むと、発見があったり、子どもの欲求不満さえみつかるかもしれません。どうしてできないの?どうしてしなければならないの? 幼い子どもはテレビのニュースや iPhone、大人の会話から大人の想像以上のことをキャッチしています。パンデミック(コロナ禍)についてどのように感じているかを話し合うことで、学校が再開して先生の話を聞くとき、または公園で他の子どもたちと遊ぶときのために、子どもなりの心の準備をさせましょう。

幼い子どもの心配事や感情を理解することは大切です。きちんと説明することで子どもの心を落ち着かせ、どうして自分はこのように感じているか、子どもが理解することを助けられます。人間が皆、基本的な感情を同じように持っているということを知るのは、一緒にアクティビティーを行なう上で、また一緒に何かを学ぶ上で大事です。今日、私は「feel good」と感じている。あるいは悲しい。あの子はどんな気持ちだと思う?

幼い子どもが感情を理解するには、まず、4つの基本的な感情(ハッピー、悲しい、怖い、腹が立つ)を子どもが確実に理解し、英語と日本語で言えることです。絵文字の表情を使っておしゃべりやアクティビティをしたり、「You and Me Times」で表情を一つずつ作ってみましょう。そして、その表情について会話を考えてみましょう。例えば、最後に悲しく感じたのはいつだったかな?あの子が怒っているってどうしてわかるのかな?あの子が元気になってきたってどうしてわかったの?

この4つの基本的な感情をしっかり理解し、言葉で表現できるようになったら、今度は、他の絵文字の表情を一つずつ見て行きましょう。好き嫌いについても話し合いましょう。これは食べ物や服の好き嫌いだけではなく、学校で会う人の好き嫌いでもいいです。子どもの気持ちに驚くかもしれません。

子どもが自分の感情を理解し、人の感情を理解する手助けは、共感や感情移入できるように導く大切な一歩です。子どもは同じアクティビティを何度も繰り返してやりたがるので時間はかかるかもしれません。なぜなら、子どもは最初に説明したことを膨らませたり、戻って考え直したりしたいからですが、振り返ることによって本当の学習ができると言われています。

そして、子どもが次の段階に進む準備ができたと大人が感じたら、ビスケット作りや、雑誌の切り抜き写真を使ったはり絵のようなミニプロジェクトを始めましょう。ミニプロジェクトでも会話をする「シーン設定」を考え、この会話の中に少しずついろんな言葉を付け加えていくことにより、子どもの言葉の使い方や語彙を増やします。子どもにとって興味深いアクティビティの中で聞いたり使ったりした新しい語彙は、テストで言葉を一つ一つ覚えるよりも吸収され、記憶に残ります。

他にも楽しいミニプロジェクトがあります。子ども自身のパンデミックの思い出帳を作ってみましょう。(A4の紙を二つに折って、厚めの紙で表紙を作ります)題は「2020年のパンデミックと私/僕」とし、折ったページに絵を描きます。字がまだ十分に書けない幼い子どもには「お話」してもらって、それを書いてあげましょう。完成したら一緒に読みながら、言葉を一つずつ追います。(この思い出帳の作成は感情を表すことで、書き方の勉強ではありません。)

「You and Me Times」がときに英語だけになってしまうと、親は日本語を忘れてしまうのではないかと心配になります。でも、どちらの言語を使っても、やる気があって、「feel good」、ポジティブに感じていれば子どもは学習し、学んだことをひとつの言語から他の言語にうまく言い換えることができます。もちろん、英語で経験したことをお母さんやお父さんが日本語で繰り返してあげれば、子どもにとってはその方が簡単かもしれません。一緒にアクティビティをやって、それについて話し、そこから広がることは学習を共有するだけではなく、気持ちの安定にもなります。アクティビティを一緒にしながら説明するお母さんやお父さんの声のトーンや、これを「どうやって?」とつぶやきながら考える様子なども、子どもが考えを吸収し、新しい言葉を自然に覚えるいい機会になります。

しかし、一緒にするアクティビティは、ポジティブなものでないと子どもには身につきません。会話に「それはダメ」、「それはしない」といった否定的な言葉が多すぎないか、言葉の間違いをその都度正していないか、注意しましょう。子どもがやる気を失ってしまいます。お母さんやお父さんのいつものおふざけ言葉で笑わせたり、急に短いライムや歌、冗談などを使ったりしてみるのもいいでしょう。こうした思いがけない言葉は、おしゃべりをもっと楽しくし、ネガティブなムードをポジティブにさえ変えます。

子どもと一緒にするアクティビティは、大人と子ども、両者がどう感じるかが大事です。感情は私たち全てが自然に持っているものです。「feel good」、ポジティブな気持ちになることは、話すことや学ぶこと全ての基本で、どんな会話にも価値があります。子どもとのアクティビティは生涯残る親子の絆となるでしょう。

2020年5月29日オーパル・ダン